飼い主の“もしも”に備え、ペットの孤立を防ぐ「もしもヘルプ手帳」が人気を集めている。岐阜市のイラストレーター・オキエイコ=本名・荻野朱加=さん(35)が考案した。特徴や性格、かかりつけ医、投薬履歴などを「母子手帳」のように書き込み、安心して引き継げる機能を備えている。
――家で大切な家族(ペット)が待っています。私に何かあったら、この手帳を開いてください――。
A6判、48ページの手帳の表紙にはこう書かれている。
ネコを飼っている一人暮らしの友人から「もし私に何かあったら、この子はどうなってしまうのだろう」と相談を受けたのがきっかけだった。家族で暮らすオキさんもネコ2匹を飼っている。「もし自分が先に死んでしまったらという切実な悩みを解決したかった」と振り返る。
オキさんは加納高校美術科を卒業後、企業でウェブデザイナーとして勤務。結婚、出産を経てイラストレーターとして独立し、子育てをテーマにした書籍を出版している。
ネコの「母子手帳」があってもいい
ヒントになったのは、2人の子どものために書き込んでいた母子手帳。「ネコも我が子同然。ネコにだって母子手帳があってもいいのでは」。SNSを通してネコの飼い主にアンケートを繰り返し、書き込む項目を練り上げた。
家での過ごし方、寝床などの様子、体調が悪いときの症状、身だしなみの頻度、「人慣れ度」……。「たくさんの声からつくられたからこそ、満足度の高い一冊になった。かゆいところに手が届く、そんな手帳になった」と胸を張る。
昨年7月、「ねこヘルプ手帳」を発刊すると想像以上の反響があった。「イヌ用もつくってほしい」という声を受けてシリーズ化。「いぬヘルプ手帳」と、「どうぶつヘルプ手帳」を相次いで販売した。
今年2月、岐阜県動物愛護センターに手帳150冊を寄付。ネコやイヌを引き取る飼い主に無料で配布されている。
売り上げの一部は動物愛護に
手帳は1冊990円(税込み)。昨年は3280冊が売れ、1冊につき50円を公益財団法人「日本動物愛護協会」に寄付した。イヌやネコの殺処分を減らす運動に役立てられている。
利用者のリクエストに応え、ページが追加できるバインダー式の「ねこヘルプ手帳」を新たに作った。8月からクラウドファンディングで先行販売している。価格は5千円(税込み)。オキさんは「手帳が役立つ日ができれば来てほしくないが、手帳を持つことで不安が少しでも軽減されることを願いたい」と話す。
手帳の購入は、オキさんが経営する「nancoco(ナンココ)」の販売サイト(https://helmo.shop)から。(松永佳伸)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル